小川由起子さんは、地元桐生市で、蚕の繭から糸をつくる製糸、染め、織りを手がけ、服飾品を製造販売する「染と織 櫟」を営んでいます。昨年11月には群馬県ふるさと伝統工芸士に認定され、小川さんの作り出す「桐生座繰布(きりゅうざぐりふ)」は群馬県ふるさと伝統工芸品に指定されました。
小さいときから好奇心旺盛だった小川さん。着物好きだった母親の衣擦れの音や紬の匂い、桐生の路地裏に響く機の音を聞きながら育ったそうです。
高校生のころから布に興味はあったものの、”染”や”織”と出会うきっかけは意外なことに19歳の時の入院でした。隣のベッドの患者が染屋のおばあちゃんで、退院後そのおばあちゃんのところに遊びに行くようになり、アルバイトをし始め、植物染めの講習会を受講するチャンスもあり、染めだけでなく手織りの勉強もしたりと、いろいろな技術を身につけるようになります。また、桐生の織物製造販売業や加工業の社長、和紙の先生など活躍している方々との出会いもありました。当時、茶道の稽古で知り合った人に頼まれて紬を織ったりしていた小川さんが、本格的に「染と織 櫟」を立ち上げたのは、30歳頃。友人がお店を始めるにあたり、「作品があるのなら発表してみないか」と声をかけてくれたため、展示会をすることになったからだそうです。
初めての展示会では、自分がコツコツ織っていたものを多くの人に見てもらう事ができ、「好きなことを続けて行こう!」とアルバイトをしながら「染と織 櫟」の活動を続けます。
そんな中、2008年に卵巣がんの告知をされ、「人生、いつ、何があるかわからない」と痛感。悔いの無いように生きようと「染と織 櫟」の仕事1本で生きていく決意をしたそうです。
「自分で糸をひく、染める、織る・・・形にしていくまでは、自分の目の行き届くようにこだわったものを作っていきたい」と小川さんは熱く語ります。
「染と織 櫟」
https://kunugi-higi.com/index.php
小川由起子さんは、4月5日(金)~9日(火)まで、高崎の大和屋でイベントを行います。
https://www.yamato-ya.jp/
インタビュー:川上直子