「私が小さい頃、よろこんで見ていたものって、なんだっけ?」
このコラムの執筆にあたって、福島に住む実家の母に電話をかけてみました。電話口から聴こえたのは「いろいろあるからねぇ…」の声。しばらくの沈黙の後、ぽつぽつといくつかの作品を挙げてくれました。そのうち、私自身の印象にも強く残っていたのが、この「ダンボ」だったのです。母いわく、VHSテープがすり切れんばかりの勢いで、何度も何度も見ていた作品だったようです。
さて、「ダンボ」は言わずと知れた世界の名作のひとつではありますが、ご覧になったことはありますか。ある日コウノトリが、サーカスのゾウ・ジャンボのもとに、青い目のかわいいゾウを運んできます。しかし、その子の耳はあまりにも大きく、周りの動物たちや人間にバカにされてしまうのです。大好きな母親との離別、周りからのいじめに悲しみ、苦しむダンボ。しかし、ティモシーというネズミをはじめ、出会っていくたくさんの仲間に励まされながら、成長していく物語です。
私がグッときたのは、ジャンボが檻越しに、ダンボへ子守唄を歌うシーンです。どんなにつらい状況になっても、家族をはじめ、支えてくれる人は必ずいるんだなと、涙を流しながらあたたかな気分になりました。このほかにも、笑いあり、涙ありで、見終わった後にはまるでミュージカルを観たかのような充実感に包まれることでしょう。同じ作品でも、時が経ってから観てみると、また違ったように映るものです。今回、十数年ぶりに「ダンボ」を観て、想像以上に深~い作品だったと知ったことに、少し大人になったのかな?と、ちょっと甘酸っぱい気持ちになりました。そして、幼い頃からこんな素敵な作品に触れさせてくれていた母に、ありがとう、と伝えたくなりました。恥ずかしくて、直接は言えないんですけどね。
もし私に子どもができたら、家族で一緒に観たい映画のひとつです。そのときには、娘や息子に伝えたいものです。「これ、お母さんも小さな頃にたくさん見たんだよ。お母さんのお母さんと一緒にね」と。
文:佐藤彩乃アナウンサー